「あ、ごめんなさい。父親のことになるとどーしてもイラついてしまってね」


武藤さんはいつも通りの笑顔に戻った…けど

なんか、接しづらいなぁ。


そんな私にはお構いなしに武藤さんは話を続ける。

「それでね、ちょっと思ったわけよ。
私が、政府の味方をする理由なんてないんじゃないかって…

それで、この計画を考えたのよ。
あなたの挑戦を挑むフリをして…

あなたと、同盟でも組もうかなって」


「……どう、めい…?」


「そうよ」

彼女はニヤリと笑う。


「あなただっていつしか反政府軍を集めようとしているでしょう?
けど、タイミングがわからない…

同盟って言葉じゃ変だけど…


私が、反政府軍に入るのよ」



「…………え?」





私の視線は確かに武藤さんの目へと行っていたはずなのに。

意識は別の方にあった。


なんでこんなに衝撃を受けたのだろう。

もしかして、私は逃げてたのかもしれない。

少し楽しいと思ってしまったこの世界…

忘れなきゃいけないってことから、逃げてたのかもしれない。


「おーい…聞こえてる?」

「え…あ、うん」

「そう…で、どう?」


武藤さんは私の目を見つめた。

綺麗な黒の武藤さんの目に、私は吸い込まれてしまいそうで…

それと同時に、『この人は信じても大丈夫なんだ』という身勝手な確信が来てしまった。



『信じたら、裏切られるかもしれないよ?』


そう語りかけてるのは…


逃げてる自分、だ。




「……分かった」

私がそう言うと、武藤さんを拘束していた物が取れた。


「武藤さん…いや、春美。反政府軍の、設立をする」

「最初は2人、だけれどね」

「子供は私たちだけで良い。この学園の人たちは、なるべく関わらないようにしたいわ」