「じゃあ、ホントごちそうさまでした」

「はい、じゃあね」

 そろそろお暇します、という上村を玄関まで見送る。

 上村がドアノブに手を掛けたところで、大事なことを忘れていたことに気がついた。

「あ、鍵は置いていってね」

「ああ」と上村は振り向き、胸ポケットから鍵を取り出す。

 私は、大事な鍵を受け取ろうと、上村に向かって掌を広げた。

「なーんて、ね?」

 そう言って、上村は私の部屋の鍵を素早く胸ポケットに戻した。

 入りきらなかったシルバーのチャームがポケットからはみ出している。

「……いい加減にしてくれる? ちゃんと鍵、返しなさいよ!」

 私はムッとした顔で、上村に手を伸ばした。が、又しても寸でのところでかわされる。

「わっ!?」