「周桜、コンクールの課題曲、守備はどうだ?」



「夢のあとに」を弾き終えた詩月に 教授が尋ねる。



「ええ、まぁ……」



5分間、思い切り弾ききり、息がかなり上がっている。



教授の表情が、やけに明るい。



詩月は、突然の演奏曲変更を咎められるかと思っていた。



それに終盤に弾いたアレンジは、教授に評価してもらえたのか?と不安になり、胸に手を当てる。



凍った空気、突き刺さるような冷たい視線の中で、詩月は何とか最後まで弾ききったが、弾いている間中、緊張で体ががくがくと震えていた。



いつ教授の怒鳴り声が落ちるか、弦が切れるか?気が気ではなかった。



詩月は、長い溜め息をつく。