1週間の試験日程にグループごと数人ずつ音楽室と時間を割り振り、実技試験が行われる。



 試験用にアレンジされた楽譜は、持ち時間1人5分の演奏に収まる長さだ。



特に目を引く演奏でもないかぎり数回聴けば退屈になる。


詩月は、つい溜め息を漏らす。



 繰り返される演奏を右から左へ聞き流しながら、詩月の頭に浮かんできたのは課題曲「ベートーベンの熱情」ではなく、「Beatlesの『Let It Be』」だった。



全く曲調が違う。



 自分の番が、あと10分もすれば回ってくるという、タイミング。



Beatles は不味いだろう!?


詩月は思ったが1度、頭の中に流れ出した曲は止まらない。



ヤバイな、緊張してるのか?



詩月は、楽譜に目を落とす。