駆け抜ける猛き馬の蹄の音、荒武者達の雄叫び、飛び交う雨矢の風音、火花散らし合う刀の金属音と殺伐とした緊迫感、何処を見渡しても、身に迫る殺気──命懸けの攻防。



気が高鳴り、胸も頬も熱くなる。



一の谷の鵯越え、屋島の扇の的当て、壇之浦の八艘飛び──。




どの場面も躍動感に溢れている。



対照的に、その影で没落し、滅びへ滅びへと堕ちていく平氏の哀れさが重なり、涙腺が弛む。




 張り詰めた緊迫感を絶やさず、ラストまで気持ちを引っ張り、勢いを増していく義経を弾き通す。



理想通りに弾ければ完璧なベートーベンの『熱情』なんだがと思うが、なかなか巧くいかない。



繰り返される旋律が、次第次第にデクレッシェンドしていく。