とくにメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は「メンコン」と呼ばれ親しまれている。



メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、派手な曲ではない分、正確で高度な技術が必要とされる難曲だ。



この有名な難曲を果たして詩月が、どう弾くのか。




また本選の自由曲に、何を弾くのか?


安坂は気になって仕方ない。




 昨年の編入試験。


詩月がピアニスト志望でありながら、ヴァイオリン専攻の主任教授に、演奏を認められた実力者だと言う噂は当時、数日も経たないうちに学内を駆け巡った。




正直なところ普段の演奏を聴くかぎりでは、そんな凄い演奏をするとは、思えないが……。



コンクールなどの大勝負や大舞台では、急成長したり、それまでとは全く印象を変える演奏をする、「化ける」演奏者が必ず現れる。