「で、今日は大丈夫なの? 体調は」



「……早朝から理久が押し掛けてきて、無理やり点滴を1本。

主治医……理久の親父さんに射ってもらって熱は下がった」



「信じられない!!」



詩月は声をあげた緒方の顔を一瞥し、どこか冷めた表情をする。



「君はどうなんだ!? 

ピアノの実技もヴィオラの実技も、結構苦労している様子だったが……」



「最善は尽くした。

後は成るようにしかならないわ」



郁子は寂しそうに言う。




「ダメだ、弾く前からそう思って満足のいく演奏ができるはずがない」



郁子は詩月の言葉にハッとする。



「何が何でも成さなくてどうする!? 

今日のために懸命に練習してきたんだろう!? 

100%の演奏をするために頑張ってきたんだろう!?


諦めや投げ出す言葉は演奏の後でいい」