あたかも革命の最中に、引き摺りこまれたような錯覚を覚えるほどの演奏。


教授達は言葉も思考も奪われ、詩月の演奏に聴き入った。



詩月は曲の終盤、途中僅かにテンポを乱したが何とか調子を戻し、最後まで弾ききった。



 続けて詩月は、試験監督の合図なしに「自由曲」を弾き始める。



「この曲……」


詩月は曲を弾き始めると、それまでの表情を一変させた。

教授達は詩月の表情よりもその演奏に、度肝を抜かれた。


詩月が弾き始めたのは、リスト作曲『パガニーニによる超絶技巧練習曲』第3番変イ短調ラ・カンパネラ。



ラ・カンパネラはリストのピアノ曲だ。

パガニーニのヴァイオリン協奏曲第二番第3楽章のロンド『ラ・カンパネラ』の主題を編曲して書かれた作品だ。



「Campanella」とはイタリア語で「鐘」を意味する。