音楽科の教科書に音楽原理がある。



楽曲や作曲家の国や歴史背景を学ぶ資料だ。



楽曲を弾く時、それらは曲の解釈をする重要な情報だ。



 詩月が、本選に弾く曲は2曲とも「チャイコフスキーの作品」だ。



詩月が改めて、その本を開くと、ロシア王朝やロシア革命のことにも触れてあった。



 作曲家チャイコフスキーを生んだ国。



詩月は古い映画「追想」を思い出した。


イングリット・バーグマンが演じるアナスタシア皇女は、凜として気高く美しかった。



その姿や立ち居振舞いが、リリィと重なる。


映画の中でニコライⅡ世の末娘アナスタシア皇女は、1920年ベルリンの運河に身を投じ、助け出された時「アナスタシア」と名乗ったという。