「あの、どういう?」



アランはフッと優しく笑い、足下の白い猫を愛おしそうに見つめた。




「こいつが電車に乗り、モルダウへあしげく通っていたのは、リリィの策だったんだ」



「……!!」

詩月の瞳が大きく見開かれた。



「リリィはこいつに思いを託し、君の『懐かしい土地の思い出』を覚えさせて、君と私が……。手紙を読んでみるか?」



アランは穏やかに微笑み、詩月に開いた手紙を差し出した。



「『神出鬼没の白い猫』こいつは聖諒の学生達から、そう呼ばれているそうだな。
『チャイコフスキーを聴く猫』とも」



アランは手紙を読む詩月に、目を細めた。



「ったく、君の元師匠は大した女性だ」




そう言って微笑むアランの顔からは、吹っ切れたような清々しさが感じられた。