アランは、じっと詩月を見つめ黙りこんだ。



ヴァイオリンケースを開け、詩月はリリィの娘から預かった手紙を取り出した。



「リリィの写真立てから見つかった手紙だそうです。

葬儀の日に、娘さんから預かりました。

貴方なら、手紙を宛てた人がわかるはずだと言われて……ずっと持っていました」



「リリィの……手紙」



アランは、詩月が差し出した手紙を受け取り、ゆっくり開き、読み始めた。



手紙を読む、アランの指が震えている。


険しかったアランの表情が緩み、その目がみるみる赤くなった。



「リリィ……君は、クレセントにまで彼の演奏を覚えさせていたのか……」



「え!?……」



「もう1度、ヴァイオリンを……弾かせるために。

『懐かしい土地の思い出』を一緒に弾くために」