「……もしかして、貴方が街頭演奏の提案を」



「ああ。そうだ、私だ。あの頃の君は、コンプレックスの塊だった」



「……」



「いつだったか……山下公園で弾いた『宵待草』に、さりげなく寄り添うように奏でられたヴァイオリンの音色。
あれが君だったことに……君の『懐かしい土地の思い出』を聴いていて、気づいた」




ーーあの『宵待草』は、やはりこの人だった、アランだった



詩月は胸にこみ上げてくるものを感じた。




「あの『宵待草』の音色に癒された。

そして君が『懐かしい土地の思い出』を弾いた時、伝えようとしたんだが……」



ーー此処に来て良かった。貴方に会えて良かった



詩月は、そう思った。