金木犀のアリア

時々、マスターの奥さんがピアノの弾き語りをする。


ハスキーボイスの愁いを帯びた歌い方が優しく、疲れた体を癒す。


マスターの奥さんが夏時期に歌う沖縄民謡風の歌、は絶品だ。




この喫茶店は詩月が通うヴァイオリンの師匠の教室も近くにあり、レッスンを終えた詩月がよく通っている店だ。



『もしもし、貢。会える?』



理久が安坂の携帯電話にメールしたのは、午後8時を回っていた。



理久は昼間、安坂から電話があった後、ずっと詩月の様子が気になっていた。



大学生になって以来、講義とバイトで、詩月と顔を合わせる機会が減っていた。

家が隣同士なのに、なかなか話ができないでいる。