金木犀のアリア

『!もしもし……』



『誰!? ……郁子? 兄貴には連絡入れたけど、詩月治まった?』



『まだ……今から、病院へ向かうって』



『正解だな。……郁子、あいつ何かあった?』



『……ちょっとね。後でゆっくり話すから』



『わかった……うわっ、ヤベぇ講義始まる』



郁子はプツンと切れた電話の音に、先ほどまでの出来事が嘘ならいいと思った。

携帯電話を閉じ、急いで安坂の後を追った。



階段の途中、郁子は安坂に追いついたが「郁、授業が始まるぞ。後で様子は知らせる」と、安坂に言われてしまい、渋々教室に戻った。



郁子は、詩月の安坂に抱きかかえられ、蒼白で苦しげに息をつく姿が、ちらついて授業など上の空だった。



 授業終了後。
安坂は郁子に「特に心配はいらないそうだ」と、詳しいことは語らなかった。