普段、揉め事などには関わらない、声を荒らげることもない詩月が、揉め事の中心にいる。



そのことを信じられないとでもいうようなざわめきが、あちらこちらで起こっていた。





郁子と安坂も席を立ち、普段と違う詩月の様子を窺っている。



「聞いてるのはこちらなんだがな。生徒会長」



詩月は言って手を緩めた。



生徒会長は制服を正しながら、詩月を睨み返した。




「親が有名なピアニストだと、街頭で派手なパフォーマンスをしても、何ら咎められもしないし、行事のたびに何かと目をかけてもらえる。
大した演奏をしなくても関係者の注目を得られる」



Jr.と言われることがどれ程、屈辱かを知りもしないで


詩月は小さく舌打ちをする。