「問題がないなら、それでいい。君には文化祭で、しっかりPRをしてもらわなくてはならないからね。故障などしてもらっては困るんだよ、この先も」



「ご心配なく」



詩月は学長から目を反らさず、指を素早く巧みに動かし、痛みを堪え毅然として言い返した。



「結構。くれぐれも用心し、良い演奏をしてくれ給え」



ーーこの人の言葉はいつ話しても、「学生は商品だ」としか受け止められない。高飛車で威圧的で、傲慢知己だ。
毎回、苛々する



詩月は舌打ちしそうになるのを抑える。



「お気遣いありがとうございます」



45度、最敬礼して学長室を出てる。


詩月は学長室の扉を思い切り、蹴り飛ばしたい衝動にかられたが、なんとか踏みとどまった。