途中、幾人かの学生とすれ違い、チラチラと視線を向けられた。



詩月はテーピングを外してきて正解だったと思った。


 学長室の扉をノックし、中に入る。


学長は、机の上に広げた書類に落としていた目線をあげ、険しい顔を詩月に向けた。



「昨日から君の噂が入ってきていてね。指の調子が悪いという話だが……実際、どうなんだね?」



「どの筋からの情報でしょうか?」



詩月は即答を避けて、尋ねる。



「私の情報網は、様々な所に張り巡らせてあるのだよ。

生徒の情報を得ることくらい容易いことだ」



椅子に深々と腰を下ろし、腕を組み醜い笑顔を、詩月に向ける。



「残念ながらデマですよ。用心のため専門医に受診しただけです」




詩月は負けじと言い放つ。