金木犀のアリア

「誰が堅物で、血相変えてるって?」



郁子の頭上から、大人びた低い声が降る。



「だから貢は……」



郁子は言いかけ、振り向いてアワアワと慌てふためき、2人を確認し、ふふっと誤魔化したように微笑んで見せた。



「ひどい言われようだな」



「そうだな。郁子、お前は相当鈍いよな。詩月が目配せしているのに、ちっとも気づかねぇ」



「貢も理久も、貴方も人が悪いわ」



郁子は言って、頬を膨らませた。



「安坂くん、いいところへ来たね。今、君ならアランの演奏を知っているだろうって話していたんだ」



「大学の録音ブース履歴に、アラン准教授の演奏がないかしらって話してたの」