金木犀のアリア

「じれったいわね! はっきり聞きなさいよ。2人は恋仲だったのかって」

「……君は、味も素っ気もないな」



「あはははっ」



マスターが高笑いをし、目を細める。



「彼らは、いづれ一緒になるだろうと誰もが思っていた。
事実、アランは留学を終え帰国したら、リリィにプロポーズすると話してもいたんだが……ね」



「……運命って残酷だわ」


郁子が瞳をうるうるさせ涙声で言う。



百面相だな、詩月は思う。



「安坂くんが、確か高1の時、アランに教わっていたと思うんだが」



ひと呼吸おき、マスターが思い出したように言う。



「安坂さんが?」



「それなら……大学の音楽科、録音ブースの演奏履歴を漁ってみましょうよ。
もしかしたら、彼の演奏が残っているかもしれないわ」