金木犀のアリア

―――あの宵待草の演奏は、アラン?




夕暮れ音を重ねた、演奏とシルエットが詩月の頭に浮かんだ。




「リリィはひどく悲しんでね。それでもリリィは此処に、たびたび顔を出していた。
アランは音楽を捨てられる人ではないと」




詩月はあれっきり、あの男性のヴァイオリンの音色は聴いていない。


あれが、アランなら……。


詩月はあの拙い演奏も納得できると思った。



「リリィは、彼がもう1度、ヴァイオリンを弾き始めると信じて、待っていたんだ。
……春先から、リリィが体調を崩し、此処へ来ていないと、アランには話しているんだが……。
その猫は、元はリリィの家で生まれた猫でね。
リリィがアランに譲ったんだ」



詩月は大きく身を捩り、ピアノの上に座った猫を振り返った。