金木犀のアリア

「ほお、条件に条件を? 君の前の高校での噂は聞いている。好きに弾きたまえ」

勝ち誇ったような学長の顔に、詩月は苛立ちを覚えたが、「失礼します」と扉の前で深々と頭を下げ、詩月は心の中で叫んだ。


周桜Jr.なんて2度と言わせないからな。


退室すると、生徒会長がどう報告しようかと項垂れたように、扉の外に立っていた。


「引き受けたからな」


詩月はポツリ言い、ヴァイオリンケースを肩に掛けた。



「おい、周桜! ちょっと待てよ」



生徒会長が声を荒げ、慌てて詩月の手首を掴んだ。




「……っ」


詩月は小さく声を漏らし、手首を庇い、うずくまった。




「周桜、お前、まさか!」



「……何でもない」



詩月の声が震える。