金木犀のアリア

「お前、ピアノ専攻だろ。やっぱピアノ目当てだろ!」


委員長は、ピアノを強調して答える。



「もしかしてショパンも指定か?」



生徒会長はすまなさそうに、目を反らす。



「父と比較されるのは真っ平御免!! 僕は周桜Jr,ではない」


詩月は、ヴァイオリンを抱え直して教室を出た。



「周桜、待てよ! 周桜!!」



生徒会長の声が廊下に響く。



詩月は振り向かなかった。



どんなに頑張っても父のオマケとしか評価されない。



心が騒ぐ。




ーーまた、逃げるのか? ショパンしか褒めてくれなかったピアノ教師を殴って自主退学し、聖諒学園に編入してきたように、また逃げるのか