金木犀のアリア

「君の場合は、演奏よりも体調管理が課題のようだな。
当日は万全で挑めるように」



「はい」


詩月は何となく答えた。




 ヴァイオリンのコンクールには、安坂貢も出場すると詩月は聞いている。



安坂貢は大学で今秋から、1年生ながら、コンサートマスターに抜擢された実力者だ。


コンクールの模範みたいに、正確な弾き方をするのに華がある。

不思議な持ち味の演奏をする。


型破りな演奏をすると、言われている詩月とは正反対だ。



 ヴァイオリンコンクール本選の課題曲は、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲 作品35。



ベートーベン、メンデルスゾーン、ブラームスの所謂、3大ヴァイオリン協奏曲にチャイコフスキーの作品35を加えて4大ヴァイオリン協奏曲と称される。