……そう言えば……。



詩月は、アランがモルダウに学生証を届けに来た時、「指は?」と言ったことを思い出した。



彼は……運指を見て何か気付いたのか!?

ただ、学生証を届けに来ただけではなかったのではないか!?



詩月はかき集めた楽譜を揃え、ファイルに入れながら、不安を懸命に鎮めた。




 ヴァイオリンのコンクールが迫っている。


課題曲の微調整。

予選の課題曲も本選の課題曲も、詩月はほぼ完璧に仕上げている。



「覇気がないな。弾く気があるのか!

内部受験の合格をもらって気が弛んでいないか!!」



曲の弾き始めから、険しい顔をしているヴァイオリン教授が、曲の途中で、詩月に渇を入れる。