そして、翌日ーー



一時間目から移動教室だったため、教室につくとさっそく準備をした。


今朝もゴミが入っていたせいで、分別作業に追われて時間が削られてしまった。


私の足首の捻挫は、重度ではないけど、足を地面につくたびに痛みがはしる!



うっ。


やっぱり、昨日バイト休むべきだったかな…。


看護師のお母さんに処置をしてもらい、“足の使いすぎ!” と叱られてしまった。


でも仕方ないか…。


この程度の傷で済んだんだもん。


痛みをこらえ、普通に歩いてみせる。



隣には唯ちゃんがいるけど、バレてないみたい!



「咲希ちゃん、私トイレに寄ってから行くから、先に行ってていいよ!」


「うん、わかった!」


ちなみに、ちーちゃんは日直のため、準備をしに先に移動教室へ行っていた!



私もその教室に向かって歩いていると…。





あれって………



笹原さん……?





笹原さんが前から歩いてくるのが見える!



このままだとすれ違う距離だった。



途端に緊張がはしる!


身体が急に強張ってきて、脈も速くなった。


でも私の心は、そんなプレッシャーを跳ね除けた!




笹原さんに、言いたいことがある!




私は意を決して彼女に話しかけた!



「笹原さん…!」


「あれ?あなたはぁ~……、鳴瀬さん…?なに?里菜になにか用??」


「ちょっと、お話したいことがあるんですが。」


「え?なぁに?里菜ちょっといま急いで…」


「霧島くんのことです!」



すると、途端に笹原さんの表情が変わった……!!



「理人……?」


「言いたいことは唯一つです。もうこれ以上、他人を傷つける行為はやめて下さい。」


「はあ……?!なにそれ?わけわかんなぁ~い。しかもそれと理人と何の関係があるワケ?」


「笹原さんだって知ってるはずです。そのことによって、霧島くんが苦しんでいることを!」


「っ!!?」


「だから、もうこれ以上、他人に嫌がらせや怪我をさせる事は…」


「だったら!!………そんなに言うんなら、里菜がやったっていう証拠でもあるんでしょうね?」



え……。



「なによ?まさか無いのぉ!?あきれるぅ~。そんなんで里菜に罪かぶせようとしたんだぁ?」



た、確かに……!



証拠と言われたら何もないっ!!



でも!!



「無いです……。でも、笹原さん自身が一番よくご存知なんじゃないんですか?ご自分がされてること。」


「なっ!!!」


予想外の返答だったのか、笹原さんが目を見張った!!


「そしてそのことによって、霧島くんが少なからず、喜んでいないことも!」


「…………。」


「お願いです!だからもう、人を傷つけることはしないで…!霧島くんを悲しませることは絶対しないで!」


かなり無茶なことを自分がしてることはわかっていた。


わかっていたけど、このまま何もせずにはいられなかった!



霧島くんのことを想うなら、なおさらだった……。



時間が過ぎていく。



笹原さんは黙ったまま。



やっぱり、私のしたことは無駄だったのだろうか……?!


すると、笹原さんが口角を上げ、私に告げてきた。


「………そんなに言うんなら、交換条件しない?」




え……?




「交換…条件?」


「あなたの条件をのむかわりに、あなたも里菜の条件をのんでもらう。どぉ?いい案でしょ?」



交換条件って……。



笹原さんが何もたくらんでない事はあり得ない!



もしかしたら、罠かもしれない………。



どうする?!



この場で簡単に返事していいの!!?



「それがダメなら~、これ以上里菜と話しててもムダだよねぇ~?」




!!!





もしかしたら、これが最初で最後のチャンスになるかもしれないっ!!!



やるしかない!!



「………わかりました。どんな条件ですか?」


「簡単よ。あなたが理人に直接言うだけ。」




え……?




霧島くんに……?!




嫌な予感がした。



笹原さんが笑顔で私に告げた条件……。



それは私にとって、とても残酷なものだった………!!!





「 “アンタなんか大嫌い” ってね。嫌われて欲しいの。理人に。」