午後3時、駅前。




私は霧島くんに送られ、待ち合わせ場所へやってきたんだけど……。


「咲希のダチ、何処にいんだ?」


「おかしいな。もう着いてるってさっき二人からメール来たのに。」



ちーちゃんと唯ちゃんの姿が見えない…。



何処に行っちゃったんだろ?


場所は間違ってないはず…。


「電話してみ?」


霧島くんがそう促してくれる。


「そうですね。かけてみます!」


と、言って携帯にかけてみたものの、留守電になってしまい二人とも連絡がつかない!


「う~ん……もしかして何かあったのかな?!」


今度はメールを打つことに。


「えっと……。」


カチカチとボタンを押していると……。


「咲希、けっこうメール打つの遅いな?」



ノシ……


と背中に重みが!!



へ!?



この重み、さっきお店で………


ってことはまさか!!



すると今度は頭のテッペンも重みを感じる!


お、重い……。



「霧島くん?!ちょっと、重いのですが!!?」


重さの正体はやはり霧島くんで、私の背中にくっついてきた。


霧島くんの顎が私の頭に乗り、彼の両手がいつの間にか私のお腹辺りに組まれていて、
ダラ~ンと脱力感丸出しの格好になっていた。


「咲希小せぇからスッポリ収まって楽。」


「あの……私は決して……楽ではないのですが…………!?」


「いい匂いするし、癒されるし。抱き枕にしてぇ。……家に持ち帰るか!」



え!!?



冗談だよね!?



っていうか、私ってただの霧島くんの癒しグッズ!??



「あの~私、骨張ってるんで、きっと寝心地とか最悪だと思いますよ?それに寝相悪いので、抱き枕にはならないかと…。」


すると霧島くんは私から体を離し、吹き出してしまった。


「ブハハハハハ!!咲希って寝相悪ぃのかっ!しかも骨張ってるって…!ただ余計な脂肪がないだけダロ?クククッ。」



な、なによ!



もう!


焦って言い訳してる自分がなんだか馬鹿みたいじゃない!


頬を膨らませていると、霧島くんが横からつんつんと頬を突っついてくる。


「なにむくれてんの?寝相悪いの可愛いじゃん。」



ムッ!



「むくれますよ!……笑ってたくせに。」


カチカチとまたメールを打ち出す。


「なぁ、咲希。」


「…………。」


「咲希さん?」


「…………。」


「おーい、咲希?」


「…………。」


「まぁ、聞いてくれなくてもいいけどさ、アレ。あそこの植え込みのところに隠れてんの、咲希のダチじゃね?」


「…………え!!?何処!!」


霧島くんが視線で教えてくれる。



その視線を追っていくと、数メートル先の花壇のところに二人の頭が出ていた!


え!?


ちーちゃんと唯ちゃん??


何やってるんだろ!??


するとそこから微かに声が聞こえてくる……!



「……あ!二人ともこっち見た!ヤバイ、バレたかも!!」


「ね、ねぇ、千枝ちゃん…。私、もうこの格好……恥ずかしいんだけど……。」


よ~く見ると、二人は両手に葉のついた枝を持って隠れていた。


「唯ちゃん、大丈夫だって!全然おかしくないよ!」


「でも……さっきからココを通ってく人達、みんな私達見て笑ってくよ?」


「仕方ないよ、咲希が王子連れてきちゃったんだからさ~!やっぱしあたしらは見守らないと!!それに、“木を隠すなら森の中” っていうじゃない!?隠れるにはこれが一番ッ!!」



ちーちゃん……声が大きいからバレてるよ。



「千枝ちゃん、それはちょっと使い方が違う気が……。今の状況は “頭隠して尻隠さず” が当たってるんじゃない……?だって、さっきから咲希ちゃん達、ずっとこっち見てるよ?!」



いや、お尻は隠れてるんだけど、頭が出てるって!



すると私の後ろで再び笑い声が……!



「ハハハッ!ヤスから聞いてたけど、咲希のダチも面白れぇな!?」




ブハハハハハハ




うっ!


なんか恥ずかしい……。


顔から湯気が立ちのぼりそう…。


私は爆笑している霧島くんを一人おいて、二人のもとへ駆けていく!




「「ゲッ!!見つかる!!」」





ササッと逃げようとする二人に向かって私は、その行くてを阻む。


「ちょっと、そこのお二人さん。声が丸聞こえなんですけど?…ちーちゃんと唯ちゃん!」


ビクゥ!っと二人の肩が跳ね上がり、ゆっくりとこっちを振り返った。


その格好が可笑しくて、私は思わず笑ってしまった!


「あはは!頭に葉っぱが付いてるよ!?」


二人は互いの顔を見合わせ、そして苦笑いをしていた。


「ごめん、咲希!あたしらそこで待ってたら、遠くで咲希と霧島王子が手を繋いで歩いてくるのが見えたから、あたしらお邪魔かな~~?と思ってさ!ごめん!」


ちーちゃんが手を合わせて謝ってくる!


「そうなの。だからちょっと気を遣おうって話になって…。ごめんね!でも、その、二人が抱き合うのを覗き見する気はなかったんだけど……。」



ハッ!!



ま、まさか、さっきの!!



み、み、見られ……



「唯ちゃん、“抱き合う” は違うわよ!“抱き締められた” のよ!!アレは!」


「あ!そうか!!語弊があったよ!気をつけないと…!」


「ちょ、ちょっと?!二人とも違うんだからね!!勘違いしないで…」



するとハッ!!と二人の顔が急に強張る。



ん?



どうしたんだろう??



「咲希、今さら何を恥ずかしがってんだ?もう “大人の付き合い” をしまくった仲ダロ?」


へ?!


大人の付き合い?!!



いつの間にか私の背後に霧島くんが居て、意地悪そうに微笑んでいる!!



ハッ!!



またからかって!?



するとちーちゃんが本気に捉えてしまい、


「咲希ッ!!あ、あ、あ、あんた!もうそんな…………!!!」


「千枝ちゃん?!ちょっとしっかりして!!鼻血がッ!!」



ついにちーちゃんが鼻血を出してしまった…!!



「ちょっと霧島くん!!?ちーちゃんの鼻血をどうしてくれるの!!」


「咲希が悪い。変な言い訳しようとするから。俺は間違ってないし。」


そう言うと霧島くんは、ツーン!と、そっぽを向いてしまった!



今度は霧島くんが拗ねちゃったよ…。





と、その時!





遠くから複数の足音がバタバタと聴こえてきた!!



その正体は女の子の集団だった!!



え!何アレ!?


こっちに向かって走ってくる!!!



集団が勢いよく駆けてきたところは………。




「理人~!こんなところで何やってんのぉ!?」


「駅前で理人に会えるなんてマジ、ラッキー!」




え……。




その集団が行き着いたところ。



それはなんと霧島くんだった!!