「あ!そういえば…柊くん、掃除……。」


唯ちゃんもいま思い出したようで…。



私と唯ちゃんはお互い顔を見合わせると、苦笑してしまった。



仕方ないかー…。


時間無かったみたいだったし。



私がやっておこう!



すると図書室に生徒がちらほらと入り始めていた…。


「あ!いけない!受付の準備まだできてないよ!」


「そうだった!じゃあそっちは唯ちゃんに任せてもいいかな?私は准平くんの掃除場所もまとめてやっちゃうから!」


「え!咲希ちゃん、大変じゃない!?私も手伝うよ!」


唯ちゃんが気遣ってくれるけど、


「図書委員さ~ん。本返したいんだけど。」



あ!!まずい!



「唯ちゃん、大丈夫だから受付お願いっ!!」


「わ、分かった!終わり次第そっち手伝いに行くから!」


そう言って、急いで受付へ向かっていった…。



さてと!



やりますか!



それにしても…図書室の窓ってけっこう横広というか……。


一枚の窓の面積って広いんだな~!


よく見ると、窓にあまり掃除の手がいってないみたいで、
特に四隅の汚れはなかなかのもの…!




ほほう…


と眺めていると。



「もしかして、准平がやるはずだった掃除をやろうとしてねぇか?」



わっ!!



いつの間にか霧島くんが私のすぐ後ろに立っていた!



「あ、悪ぃ!驚かせたか…。」


と、霧島くんは一歩下がる。


「い、いいえ!そんなこと…!」


すると突然、霧島くんが床にあったバケツを持ちながら訊いてくる。


「どこ?掃除。」


「え!?」


「准平の分の掃除場所。どこ?」


掃除場所を訊いてくるなんて……霧島くん、まさか……。


「え…っと、あの、図書室の…窓全部………です。」



ま、まさかとは思うけど………!!



「窓全部だな…?分かった。」


「え!!ちょ、ちょっと待ってください!霧島くん、まさか窓の掃除をやるつもりじゃ……?!」


「あぁ。そのつもりだけど。」



や、やっぱり……!!



「えぇ!!そ、そんなことさせられません!」


「…ところで鳴瀬。鳴瀬はダチの手伝いをした方がいいんじゃないか?なんかテンパってんぞ?」


え!!?


見ると唯ちゃんは、貸し出しカードが見あたらないみたいで困っていた!!



た、確かにっ!



いや、でも!



掃除を霧島くんにやらせるのはちょっと気が引けるし……、


かなり申し訳ないよ!!



「鳴瀬。今、“俺に掃除をさせんのは、申し訳ない”って思ったろ?」



え!!!なぜそれをっ!!



霧島くんを凝視してしまう!



「やっぱそうか…。スゲー顔に出てたぜ?」


と、フッと優しい笑みがこぼれた!






ドキッ!





そ、そんなに顔に出てたかな…!?


思わず顔に手を当ててしまう!



な、なんだか恥ずかしい……。


「ま、んな事は気にしないで、早くダチを助けに行ってやれって。」


と言って、
霧島くんはバケツと雑巾を持って歩き出してしまった!!


「あ!でも霧島くん、やっぱり悪いので…!!」


その時、



ピタッと霧島くんの足が止まる。



そして少しだけ振り返ると、


「この前の“詫び”。まだ鳴瀬にしてなかったなと思って。」


え?



……詫び??



…………って、昨日の!!?



すっかり忘れてたけど、そういえば霧島くん、そんなこと言ってたっけ!



「だから掃除、やらせてもらえると俺としては助かるんだゎ!」



霧島くん……。




その時、トクンと胸が少し高鳴った。




“じゃ、頑張れ。”と言って、
今度こそ霧島くんは行ってしまった…。


あ~。


やっぱり阻止できなかったかー……。



霧島くんには敵わないなぁ。



そんな霧島くんの後ろ姿に、“ありがとう” と呟いて、私は受付へと急いだ!