「あんのクソジジイ~~~!!!!俺になりすましやがって!!シメ殺すッ!!」



霧島くんの怒りは沸点を突き破り、
いまにも巨大なマグマが噴火しそうな勢い!!



「それにしても、この写真……マリコさんの若い時の写真かな?!霧島くんに本当にそっくりだよね?!」


何度本人と写真を比較しても、うりふたつだった!


「そっかぁ!あの人、理人さんの叔父だったんだ!!」


准平くんも今は納得している。




そう。



この策略の首謀者はマリコさんだった……。




「のりおの野郎、マジ許せねぇ!! “もしも咲希に嫌われたら!” って考えなかったのかよっ!!あのチャイナジジイ!!!」


「理人さん、でもこのビラに書かれてる『清き一票』っていう字さ、やっぱし理人さんの字に似てるよ!!これじゃあ俺だって騙されちゃ……ッイテー!!」


霧島くんの鉄拳が准平くんの頭上から降ってきた。


「っざけんな!どこがジジイと似てるだって?!しかもこの『清』のさんずいの書き方が全然違ぇーよっ!!!」


と言って、どこから取り出したのか、
油性マジックでチラシの裏に書いてみせる霧島くん!




あ……。




でも似てる!



「さんずいの書き方は違うけど、確かに似てるね!!マリコさんも霧島くんも凄く達筆なんだ!!すごいね!」


私はなんだか自分のことのように嬉しくなってきて、口元が綻んだ。


「っ!た、達筆じゃねぇよ……、別に。」


霧島くんはというと、プイッとそっぽを向いてしまった。


「あ!理人さん、照れてる!ピュア子ちゃんに褒められてるから、照れくさ…………イッテェーー!!!」


またもや准平くんに鉄拳が!



准平くん、頭大丈夫かな…!?



そんな心配をしつつも、もう一度霧島くんの字に目を落とす。




でも、この字……




どこかで………?




するとスカートのポケットがカサッと鳴った。





ん……?





ポケットに手を入れてみると、一つのメモが入っていた。




これって、



あの時の…………。




《間違えて履いてしまいました。お返しします》




そうメモに書かれている。







いつの日だったか、私のローファーが自分の下駄箱へ戻ってきた時、
このメモが添えられていたのだ!



まさかとは思うけど……。



そんなはずは無いとは思うんだけど……、



でも!



私は勇気を出して霧島くんにメモを見せながら問いかけた。



「霧島くん。このメモ、霧島くんが書いたの?」



「ん?どした、咲希?……っ!!」





!!!






霧島くんはこのメモを見た瞬間、
はっと息がとまり、目が大きく開かれた!!



「やっぱり……霧島くんなの……?私の靴、探して見つけてくれたのは霧島くんだったの?」


「い、いや、俺は記憶にない!誰かが間違えて履いて、それで咲希に戻しただけだろ!良かったよな。ローファー見つかって!…な?」





え……?






「それよりも咲希。さっきの続きなんだけど、俺の名前…、」


と霧島くんが私を抱き寄せた時、
急に強い風が吹いた!!





そして!!






「ゲッ!!り、理人さんヤバイッッ!!!ビラが飛んでっちゃった!!!」




風に乗って、例のチラシが一斉に飛び始めてそのまま落下したっ!!!




「なっ!!!准平!!てめぇ何やってんダヨッ!!!~~~ッこうしちゃいられねえぇ!!!即行で回収すんぞ!!!!……咲希、悪ぃが先に飯食っててくれ!すぐ戻るから!」


「え!?あの、私も手伝う…、」


「早く理人さん!!!下の連中に拾われてるッ!!!!」


「ッ!!!拾ってんじゃねえぇぇ!!!殺すっ!」



あ……。



行っちゃった。



ポツンと取り残された私は、屋上から下の様子を見ることに。


でも私はさっきの霧島くんとのやり取りを思い出していた……。




さっきの霧島くんのあの反応……。




それと。




『良かったよな。ローファー見つかって。』




私、 “靴” とは言ったけど、




“ローファー” とは言ってない!





やっぱり、霧島くんが……!!





すると下の方で霧島くん達の声が聞こえてきた。



「理人さん!コッチ!野次馬で拾えないって!!」


「見んな!!拾うな!!近づくなっ!!!」





霧島くん……。





あの時、私はまさか霧島くんが靴を取り戻してくれたなんて、


夢にも思わなかったんだよ?









『気のせいかな……?前よりも綺麗になってる??』


『……もしかして間違えて履いちゃったから、気を遣って磨いてくれたのかな?!凄く几帳面な人なんだなぁ〜。』






霧島くんなんでしょ……?






そう思ったら、
湧き上がってくる熱い想いが溢れ出した!!!




「……ひ…と…。」




下ではまだ霧島くん達の声が聞こえてくる。




「だから見んなぁ!!!触んじゃねえぇって!!」





「ーーーッ理人!!!!」






「……………え?」





ふと霧島くんが見上げてきて、私を驚きの眼差しで見てくるっ!



それは他の人達も同じで……。





でも、抑えられないよっ!!




私は……



あなたのことがこんなにも好きなの!!




羞恥心を破って、私はまた愛しい人の名前を呼んだ。





「……っ理人!!!!……っ大好きだよ!!!!」






風が吹く…。



私が叫んで呼んだ声は風に乗って、理人の所まで届けられた。





理人、好きになってくれてありがとう。



あなたに出逢えて良かった…!




大好き!!!






Fin