その後、すぐにコピ・ルアックを出た私は、霧島くんと一緒に帰りの道を並んで歩いていた。



「き、霧島くん。ご、ごめんね!お醤油持たせちゃって…!そ、それに、わざわざ家まで送ってもらっちゃって…。」


「ん?気にすんな。男が重い物を持つのは当たり前。それに、咲希をさっきのような危険なめには、もうあわせたくねぇし。」



霧島くん……。



サバサバした口調だけど、この彼のさりげない優しさが、
時々、私を幸せにしてくれる…。


それにさっきからずっと車道側を彼が歩いてくれている。




いつもそうだよね。




不器用だけど、見た目とは全然違って意外と神経が細やかというか。


大雑把のように見えて、小さなことにすぐ気がついてくれるし…。



そんな彼を見て、
私は愛おしくって、好きで、溢れる気持ちを持て余していた。




でも!




さっきの………あの “行為” を思い出すと………。






『咲希に、俺のモンだっていう証をつけたい…。』


『わ、私も……………してほしいよ……?』




きゃああぁぁ!!






『そのまま、口開けてて?』


『待っ!…っつ!!ン!』


『待たない。する。』


『ふぁっ……きりし……っンン!!』






ひゃああぁぁぁ!!!!





心の中で何度も絶叫してしまうのだっっ!!!



わわわわわたしは、

なななんて大胆なコトを言ってしまったんだろう!!!!




あ、穴があったら入りたいよおぉーーー!!!



いくら霧島くんの告白が嬉しかったからって、


あああんな自分から………


キスを………


“してほしい” …………



だなんて!!!




ただの破廉恥女だよッ!!



思い出すとプシューッと顔から蒸気が出てきそうな勢いで。



でも回想は止まらなくて、私の心を支配していた!!




「咲希。」


「…………。」


「……咲希?どした?」


「……へ!!?…あ!ははははい!!何でしょうっ!!?」


「手、繋ぎたい。」


「あ…。」



その瞬間キュッと握られてしまった。




ひゃっ!



ど、どどどうしよう!!



さっきのコトもあって霧島くんに触れると、あの事がまた蘇ってきて……!!







『咲希………。っ……好きだ。』


『ン!っ……はっ……んん!』


『……っ可愛い。咲希。』





「ひゃあっ!!!」




ドカアアァァーーーン!!と火山が噴火したように、
全身が熱くなって妄想ではもう耐えられなくなり、ついに悲鳴を発してしまった……!!



「咲希?!ど、どうかしたか?!」


と、珍しく霧島くんの焦った声が聞こえてきた!



「え?!………あ!い、いえ…………。」



ま、まさか、言えないよ!!



“さっきのキスのことを考えてました。”



……なんて!!!



恥ずかしすぎるっ!!


顔を伏せて霧島くんの手に引かれながら歩いていると、
急に彼が立ち止まった!



え……?



ど、どうしたんだろう??


「咲希、ちょっと公園寄ってもいい?そう長く時間はとらせないから。」


「は、はい!」


「ん。…ありがと。」


と同時に、霧島くんがニコッと蕩けるような笑顔を私に向けてくれた!!




!!!




私の大好きな霧島くんの笑顔!!



鼓動が高鳴って、これ以上私の心臓が保つのか逆に心配になってきた…。






公園に入ると、霧島くんは日当たりのいいベンチへと向かい、
二人ならんで座った。


すると、霧島くんが体をこっちに向けてくる!



「…咲希。あの……、改めて言わせてほしいんだけど……。」


「え……?な、何でしょうか?!」



なんだろう!?




ドキドキする……!!




「……俺の。……ッ俺の彼女になってくれ!!」


「…っ!!」


「咲希のこと、本気なんだ!!だから、俺と、付き合ってくれ!!」



そう言って霧島くんは私に礼儀正しく頭を下げてきた!!



「え!?あ、あの、霧島くん!?」


突然の彼の行動に面食らってしまった!


まさか、また告白してくれるとは夢にも思ってなかったし!



「好きなんだ!だから、俺と……っ付き合って下さい!」


「あの、えっと………………わ、私で良ければ!」


「ーー!!……咲希。」


霧島くんが顔をあげて私を見つめてくる。


「私も……霧島くんのことがす、好きだから、その………かかかかのじょに、なりたいです!」



つ、ついに!




言ってしまった!!



私の願望を、霧島くんにストレートに言っちゃったよ!



“彼女” なんて大それた事を言ってしまった!!



霧島くんの反応を知りたくて、チラッと彼に視線を向けると……。



「マジ……嬉しすぎる…。スゲェ好きだったから、ずっと願ってた事が現実になるなんて、あり得ねぇ……。」




え…?




彼の顔は、これまで見たことないくらいに真っ赤に染まっていた!!


「き、霧島くん?だ、大丈夫?!顔が真っ赤………。」


「……ッ!」


「きゃっ!!」


ガバッと彼に抱きしめられて、真っ赤な霧島くんの顔がみえなくなってしまった!


お、思わず言っちゃったけど、
言わないほうが良かったかな?!!



ドキドキと心臓が波打っていると、


「咲希。聞いて…?」


「ッ!!?……ハ、ハイ!!」


彼の囁きが私の鼓膜を震わせた。


「俺、もう自分の気持ちを誤魔化したりしない!咲希に見合う男に絶対なってみせる。だから、ずっと俺の側にいて?」


「……っ。」



霧島くん……!!



私は彼のその誓いの言葉に、涙がとめどなく溢れ出してしまい、

“はい。” と一言、

すぐには返事ができなかった。




この日、初めてお互いの “本当の想い” が通じ合えた時間だった。