さくらの花が咲く頃に


「リラ、本当に最後の一年を人間界ですごすのだな?」

向かいの椅子に座ったお父さまが、私に聞く。

「ええ…お父さま。18になったら城に戻ってきますわ」

「…うむ。では、マーガレットとリヒトを連れてゆけ。住処はこちらで用意する。他に希望は?」

「高等学校に通いたいのです。手続きをお願いします」

「わかった。リラの希望にそわせよう」

「ありがとうございます、お父さま」

お母さまと、お兄さま、それから奥さまのマリーさまにも笑顔を向ける。

「一年だけ、行ってまいります。許可していただき、ありがとうございます」

「そうね…。リラがいないと寂しくなるわ。手紙というものを書いてほしいの。人間界にはその制度があるのでしょう?」

「サラはいつになっても寂しがり屋だな。いい加減子離れしたらどうだ」

「まあ、何よ。リラの人間界行きを一番渋っていたのはあなたでしょう」

「それは、子を心配してだな…」

いつになっても仲の良い二人に、私たちは笑みがこぼれる。

「お母さま!ちゃんと手紙を書きますわ。お父さまにも」

「おいリラ、俺は」

お兄さまが私を睨む。

「もちろん、マリーさまにも」

すっとぼけてそう言って笑うと、お兄さまが腕をくんだ。

「リラ!兄である俺に書かぬとは何事だ」

「仕方ないですねえ。お兄さまにも書きますよ」

一同、笑いが巻き起こる。

「まあリラ、最後の一年だ。楽しんでくるんだぞ」

「ええ、もちろん!そのつもりです」

家族との別れを終えると、私は自室に戻った。