さくらの花が咲く頃に

『だいじょうぶ?』

それが、彼だった。

『大丈夫よ…、どうもありがとう。感謝するわ』

『え?あ…うん』

あ、しまった。

ちょっと大人すぎる返事だった。

『ひとりなの?お母さんは?』

彼が私を見つめる。

『ひとりで来たの。あの犬、怖かったね』

『うーん、オレ、犬は好きなんだけど、あの野良犬は怖いよな』

『野良犬というの?あの犬』

『母さんがそう言ってた』

そういう名前なのかな。

ノラちゃん。

『あ、オレ、もう帰んなきゃ』

『そうなの…。あの、あなた名前は?』

『かずまだよ。佐倉一真!』

『かずま、ね。ありがとう』

『じゃあね!今度遊ぼうね』

『ええ』

彼は、私の名前は聞いてくれなかったわ。

でも、もういいわ。

きっと、一期一会なのね。

お母様の、好きな言葉。