「拓海君って呼んでたよな」
「そうですね」
夏那は拓海先輩のことを拓海君と呼んでいた。
まぁ学校が違うから先輩ではないよね。
「俺はいつまで彩羽の先輩?」
「と言われましても…………」
先輩は卒業しても先輩だ。
「俺も名前で呼んでほしいな」
「呼んでるじゃないですか。碧琉先輩って」
「そーじゃなくて」
先輩の言ってることがよく分からない。
「ん~……、こっち」
先輩に手を引っ張られ、人気の少ない方へ連れていかれた。
連れて来られたのは誰もいない路地。
「拓海君って呼ばれてたよな?」
「そうですね…………?」
「俺はいつまで彩羽の先輩?」
「先輩は、いつまでも先輩ですよ?」
「俺も名前で呼んでほしいな」
「呼んでるじゃないですか、碧琉先輩って」
これ、さっきと同じ会話だよね…………?
「あぁ~、じゃなくて」
何故か碧琉先輩が混乱を始めた。
混乱したいのは私だ。


