「いやぁ、お願い。名前教えて、お願いだから」
どうして私はこんなにも泣いてすがっているのだろうか。
頭では分かっていないのに、本能的に名前を知りたいと懇願する。
「彩羽は覚えてる?『ここは本当、自然しかないね』そう言ったこと」
それは、私達が川に行ったとき、私がルイアに告白するきっかけとなった台詞。
忘れるはずがない。
あのときのことは今でも鮮明に思い出せる。
「あの時は誤魔化したけど、今ならちゃんと答えられる。彩羽が自然に囲まれて静かに暮らしたいと思ったから。普通の子みたいに草原を走りたいと思ったから。だからこの世界は自然で満ち溢れてた」
そうだ、走ったことのない私が雨宿りしようと走った。
いつもは見ているだけの川。
でも私は水遊びをした。
どれも今まで出来なかったこと。
それは、私が願ったことだから。
「碧琉の元へ戻ればそれは実現するよ」
その一言だけ残してルイアは完全に消えてしまった。
「いやーーーー!!!」


