命が続く限り





自分が惨めで切なくて、夢をみることを諦めた。



「でも本当はそんなカッコイイ兄貴に憧れてた。生きたいと願う人を自分の手で助けてあげられる方法を知っていて実行できる力を持っていて、なにより大事な人の命を助けてあげられることが一番羨ましかった」



どんなに願っても努力しても彩羽の病気は俺じゃ治せなかった。



兄貴だから、今まで頑張って努力を残してきた兄貴だからできたこと。



「彩羽のことがあって、昨日土井ちゃんに言われて考えてたらまた兄貴が出て行ったんだ。21時くらいだったかな。担当医が出張に出ていて電話が繋がったのが兄貴だったらしくて、患者の命を助けるために走って出て行った。その時の兄貴の後ろ姿が今でも焼き付いてる」



いつもはそこら辺にいるチャラチャラした男性と変わりないのに、仕事が絡むと雰囲気が変わって俺の知っている兄貴じゃなくなる。



「昨日見た兄貴の姿を偶然見て、俺思い出したんだ。今まで自分がなりたかったのはなんだったんだろう、って。思い出した限りでは医者になろうと思ったことは一度もなかった。それは、目の前で兄貴が医者なろうと努力してるのを見て自分が同じくらい努力できる自信がなくて逃げていたんだって気がついた。でも、もう俺は逃げない」



逃げていたから今までの夢は続かなかったのかもしれない。



堂々と公表できなかったのだろう。



「うん、わかった。それなら俺も協力するよ」



え_______



「受け入れてくれるのか・・・・・・・?」


「当たり前だ。お前らが考えた将来だ、俺も全力を尽くすよ」