「俺、N大の医学部に行きたい」
「碧琉、そこ・・・・・」
拓海が言いたいことはなんとなくわかる。
兄貴が卒業した学校、そう言いたいんだろ?
「動機、聞いていいか?」
「いや、その・・・・・・・」
2人から感じる強い視線。
「分かったから。その代わりここで聞いたこと絶対忘れろよ、拓海」
「はいはい」
拓海の返事をちゃんと聞いてから口を開いた。
「土井ちゃんは兄貴が医者って知ってる?」
「まぁ風の噂程度で」
どんな噂だよ・・・・・・
「兄貴は元々医者が夢だったんだ。子供のみる定番な夢だけど、兄貴はそれを叶えた。医者になりたい、選手になりたい、子供の時に憧れた夢を叶える人なんて極一部しかいない。それを理解し始めると夢を変えず叶えた兄貴はとてもかっこよく見えたんだ。
それと正反対で俺はころころ夢を変え、中学にあがった時には自信を持って自分の夢を公表できなくなった。と言うよりも恥ずかしくて言えなくなってしまったんだ。まぁそこら辺にいる思春期の中坊だった。
そんな自分の姿と、仕事で疲れて帰ってきてもすぐにまた病院へ行く兄貴と比べると惨めで仕方なくていつの日か夢をみなく、考えないようになっていったんだ」


