「先生、帰ったら先輩と気不味くなっちゃいましたね」
「ハハッ、そうだった」
「ごめんなさい、私のために」
「乗り掛かった船だ、気にすることないよ」
ごめんなさい、先生。
こんな巻き込み方しなくても私一人でなんとかしなくちゃいけなかった。
「先生、私最低な女みたいです」
「どうして?」
「碧琉先輩を傷つけてでも私のことを覚えててくれるかもって、思っちゃったんです」
私はあの動揺した顔と傷ついた顔が忘れられない。
私と同じように先輩の心にも私のことが残るかもって思うと嬉しかった。
「誰かに忘れられるのは怖い?」
「“誰か”じゃないんです。“碧琉先輩”に忘れられるのが怖いんです」
「そっか。もし碧琉が忘れそうになった時は俺が思い出させてやる」
「ふふっ、ありがとうございます」
久しぶりに心から笑えた。