けれども何も、始まらない


世界のどこか、日本のどこか、史倉市のどこかでは起こっているかもしれないけれども、俺の身には起こってない。


俺は変わらず、有り得ないと知りながらも、非日常的な出来事が起こるかもしれないと、微かな期待を抱き続けている。そこは、理一さんに出会っても変わらない。


ただ、今はそれだけではない。


俺は、小説や漫画でしか存在しないようなものが存在することを知っている。本城理一という名の能力者を。人の心を読む能力の存在を。


知っているだけでもいいんだ。


知っていることだけでも、特別なことだから。


例えば俺が、友人達と一緒に行動してる時に、常識外のものを見掛けたとして。その時に、俺は一人冷静でいられる可能性が高い。だって、知っているのだから。そういうことが起こり得ることを。それが俺が特別だという証明になる。


だから、今はもう、満足だ。