けれども何も、始まらない


「――えッ」


理一さんとの会話では当たり前になりつつある唐突な発言に、俺は面食らって次に言うべき言葉を忘れた。


普通って……確かに俺は理一さんから見れば普通だろう。能力をもっていない一般人だ。それは最初から判っているはずなのに、なぜそんなことをわざわざ言ったんだ?


「俺の目的を思い出して、それで。俺の友人が探してる面白そうな奴じゃないなって。――言っとくが、馬鹿にしてる訳じゃない。それは生きやすい生き方を選んでるだけだから」


「生きやすい生き方……?」


いきなりそう言われても、これといった心当たりはないのだが。


「それなりに上手く世の中渡っていけるタイプだってこと。友達はちゃんと作れるし、陰口も友達と一緒に言えるし、空気を読めて行動出来るし、自分より下にいる奴を作れるし」


「……あの……」


誉められて……いないよな。確かに当てはまらないわけではない。その通りといえばそうなのだが、嫌な奴だと思われそうな言い方だ。


「それ出来なきゃ苦労するぞ。あっという間に虐めの被害者だ。普通でしかいられないんだから、それが一番だ」