けれども何も、始まらない


「人を支配出来るとか、世界を変えることが出来るとか、ないよりはあった方がいいんですよ。それなのに、軽々しく否定して、普通がいいってそんなこと言うのが多いと思うんです」


そこまで言い切り、俺は溜め込んでいた感情を吐き出すように、ゆっくりと息を吐いた。言いたいことを言い終えてスッキリした。


けれども、理一さんは気分が悪いだろう。言い掛かりも同然のことだ。能力者側からすれば、持つ者の苦労が判らないくせにと言われることだろう。


「すみません、理一さん。好き勝手に言って。――あ、いや、理一さんの能力は今から欲しいかって言われれば断りたくなるようなもので、苦労してきたんだろうなってのは知らなくても何となく判りますし。だからその……」


「そんなの気にすることじゃないだろ。何となく悪いって思ってるようだけど、俺が気にしてないから気にしてなくていいし」


今はお互いを見ながらの会話だから、理一さんは俺の考えを断定しながら言葉を返してくる。


「……あぁはい、すみません」


「謝らなくてもいいんだけど」


「あ、はい。――いや、そうは言われても、俺は理一さんが何考えてるか判んないから、その……」


「普通だね、やっぱりというか」