けれども何も、始まらない


気付けば、理一さんは無表情だった。最初に会った時と変わらない、俺の反応が今一つだった最初の会話以降、ずっとそうだった。


もしかしたらこの無表情も能力があるからだろうか。よくよく考えたら、声にも感情が乗っていない。理一さんにとって感情は、顔に出さずとも声に出さずとも判るべきものなのだから。


しかし俺と、世の中の大多数、もしかしたら理一さん以外の全ての人はそうではない。感情は見るものではなく伝えるもの。だから理一さんは生き辛い人なんだと思う。


そんな人に俺の不満をぶつける訳にはいかない。そう思っていた。


「言いたいことを言えばいい。せっかく俺がいるんだから。俺を能力者の代表だと思っていいから」



相手のことが判るというのは、長所と短所どちらもある。今の場合は長所だ。


最初の方に言っていた通りだった。本当に、この人は俺の言って欲しいことを言ってくれる。