《一》


その人の話の切り出し方は、随分と下手だった。


「俺、超能力者なんだけど、何か話そうか?」


提案であるらしかったが、「超能力」という一言のせいで真面目な話ではないように思えた。しかしその人は、喜怒哀楽が読めない表情で言い出した。至って冷静でいるようにも見える。


だから、冗談だと判断しおちゃらけて言葉を返すことも、妄想を口にした痛々しい人だと嘲笑することも出来なかった。俺は無言のまま、その人の顔を見た。



本城理一(ほんじょうりいち)、これがその人の名前。俺の友人の二つ歳上の兄で、現在は高校一年生だったはず。


理一さんとは小学校と中学校が一緒で、俺と理一さんが廊下で擦れ違うことは何度かあったが、そこで立ち止まって話をするような仲ではなかった。


つまりは、顔を見れば誰だか判る程度の、知り合いと呼ぶ間柄。録に会話をしたことがない。


だから、この状況が理解出来ない。