「綾センパイっ!!」
叫んだ。
叫んで、夢中で駆けだした。
彼女は振り返った。
柔らかな長い髪をなびかせて。
そして笑ったんだ。
確かにあの時、笑ったんだ。
桜の向こうで、卒業証書の入った筒を片手に、綾センパイは笑ってくれた。
「センパイ、待って!」
笑ってくれたのに、俺の願いは聞いてくれなかった。
まるで俺から逃げるように、門の前に停まっていた車に乗り込んで。
綾センパイは、行ってしまった。
「綾センパイーっ!!」
俺の声の届かない所に、行ってしまった。
桜の向こうに消えるように。
おぼろげな笑顔だけを残して。
春は嫌いだ。
いつも春は、あの人を俺から奪っていく。
◇


