「ま、待って……!」



なんだか胸が痛い。


離れていくシロー君の腕を必死に掴んだ。



「いいよ」



「え?」



今度はシロー君が目を見開いて固まる。



「ファーストキス、シロー君にあげる」



シロー君の腕を掴む手が緊張から震えた。


こんな大胆なことが言えちゃう自分にも驚きだ。



顔だって真っ赤で

すごく恥ずかしい。



たまらずに顔を伏せようとすると、シロー君が私の手をギュッと握り返して来た。


そしてそのまま引っ張られて、またシロー君の胸に顔を埋める形になる。



ドキドキ


ドキドキ


心臓が口から飛び出しそう。



自分から求めたくせに、急展開にしどろもどろだった。



「莉乃」



ドキン


名前を呼ばれただけなのに、胸の奥の方が疼いてどうしようもない。


涙が溢れそうなくらい大好きなシロー君の声。



愛しさが込み上げて来て、じんわりと涙が浮かぶ。