- another -

「帰ったの。今日は用事があるとか言って、すぐ。
 だからここで待ってても、もう来ないよ?」

「……そっか」

 どうやらあの男も今来たらしい。主席の言うことを簡単に信じた。
 というかあの制服……ウチから結構遠い高校じゃん。それなのに授業終わったら即こっち来てんのか。

「(木下が罪な女なのか、フリ方が下手なのか)」

 どっちにしろ、いつまでもこのままじゃなダメだ。木下だってそのくらい分かってるだろうけど……でも話し合うくらいはしないと何も片付かないぞ。

「(つっても、毎日待ち伏せなんかされたら怖くてそれどころじゃないだろーけど)」

 まさに昨日の光景がそれなんだろう。
 あの様子――あれは怯えている時の顔だ。

 痴漢にあっていた時と、似ている顔だった。