そう後悔していた時だった。

 夕方なのに暗くなった道を、バスのライトが淡く灯す。
 バスの時刻だ。

「行こう、彩花」

「は、はい」

 王宮さんに促され、先に乗車する。その際チラッと後ろを振り向くと、あの人の悔しそうな顔が目に入った。

 そして――

「また来るから。
 彩花と話が出来るまで、何度でも!」

「!」

 プシュー――

 複雑な想いも一緒に乗せ、バスが発車する。

 窓を見ることも出来ず、かといって前を見ることも出来ず……
 私はただひたすら、下を向くのだった。