「彩花?」

「(ビクッ)」

 この声に見覚えがあるかと聞かれたら、「嫌なくらいに知っている」と私は答える思う。

「彩花、久しぶりだね」

 そう言う人物はたった一つしかない長椅子から立ち上がり、こちらへ近づく。

 濡れてない、カラッとした制服――“彼”が雨が降る前からここにいたのは明白だった。

「彩花? どうしたの?」

「……なんでここにいるの」

「なんでって、つれないなぁ」