「あ、の……」

「あぁいいよ。何も言わなくて。
 あと少しだから、このまま我慢して」

「あと、少し……?」

 男の人を見れば同じ制服だということに気付いた。なるほど、そう言えば乗車してもう十分は経っているし、少なく見積もってもあと五分もない。この地獄からも解放される!

「あ、ありがとうございます!」

「別に」

 いわゆる、クールタイプなのかな? そう言ったきり彼は目を瞑る。寝たわけではないんだろうけど、もう何も言うなってことなのかな……?

 隣の人にも「すみません」と謝って、異レギュラーな空気を過ごす。

 そしてバスは無事に『菅波高校』にたどり着いた。