腕を掴んだだけだった。

 王宮さんがあまりにも早く歩き出したものだから、咄嗟に手を掴んでしまった。

 だけど、その反応が――

「あの、なんでそんなに離れてるんですか……?」

「………………は? 何言ってんの?」

「いや、現在進行形で離れてますよね?」

「知らね」

 プイッとソッポを向く王宮さんだけど、私の掴んだ手首を執拗に触ってあたかも『汚いものに当たった』と言わんばかりの態度だ。

「(ムッ)」

 さすがに、気分を悪くする。