「おい、待てって!」

 いつの間にかほどけていた手は彼によって絡め取られ、ついでにカバンも霞め取られた。あ、すごく身が軽い……じゃなくて、いつかの時のように、王宮さんに引っ張られていた。

「これじゃあ競争の意味がないです!」

「いいんだよ!!」

 そう言った彼の顔は眉間に皺が寄っていたけど、

「じゃあ同時に入ろーぜ!」

 そう言いながら振り向いた時の彼の顔は、あの時と同じくらい眩しい笑顔だった。