「(音をあげるのは、まだ早いかもしれない……)」

 そんなことを、思った。

「あなたに、ここを譲ろうとしましたでも……やめます」

「は? あんた何言ってるの?」

「あなたの気持ちは分かります。あなたが樹のことを好きな気持ちも分かるから、苦しいのも分かる……」

 そう言うと私の上にいる彼女は目をカッと開いて、今にも噛みつきそうだった。

「あなたに私の何が分かるの?」

「――分かります」

「嘘つかないで! 何が分かるのよぉおお!!」